道端アンジェリカさんの乾癬告白に見る「恥の変化メカニズム」

道端アンジェリカさんの乾癬「告白」について考えてみる

今年5月に、女性ファッションモデルの道端アンジェリカさんが皮膚病である「乾癬(かんせん)」を告白したことがネットでも話題になっていますが、ここでは道端さん自身が乾癬患者であるかどうかよりも、何故、乾癬であることを「告白」しなければいけなかったのかについて考えてみたいと思います。

乾癬「告白」はどういう経緯で起きたのか?

詳細については下記URLを一読頂ければお分かりになる話ですが、要約すると、道端さんはモデルという職業柄、日々の運動は欠かさず、チアシードアサイーのような栄養価の高い「スーパーフード」を積極的に摂り、SNSでも美容と健康の情報を積極的に発信してきた。にもかかわらず、今年5月に「スーパーフードを食べているのに肌が汚い」と指摘するコメントをネット上で見かけたのがきっかけで、病名を公表することに決めたという話です。

乾癬であることを公表・告白してからは、同様に皮膚の病気に悩む人たちから、「この投稿を見て本当に励まされました」といったコメントが続々と寄せられ、道端さんご自身も考え方がポジティブに変わったということです。

news.yahoo.co.jp

ついでですが、実は私自身も、気が付いたら発症していたというレベルですが、肘に乾癬を患っています。色々やってみましたが、まぁー、なかなか簡単には完治しない、一筋縄ではいかない病気であることは少しは理解出来ます。ましてやモデルさんという立場ですと、その悩みたるや相当なものだっただろうと察します。

さて、本題に入っていきたいと思います。

何故、道端さんは乾癬「告白」をしたのか?

それにしても何故、SNS上で道端さんのことを「スーパーフードを食べているのに肌が汚い」と攻撃するコメントが出てきたのでしょうか?それは「モデルのくせに肌が汚い」、即ち「モデルであれば肌は綺麗が当たり前」という価値観の持ち主がいたから他ならないと考えます。周りの人達から見ると「変」に映ったということかもしれません。

そして何故、道端さんはそのコメントに対して自分が乾癬であること「告白」したのでしょうか?「症状が重いときには自身の肌を見るのもつらく、暗がりでシャワーを浴びた日々もあった」というくらいだったとのことですから、自分でも「変」だと分かっていたものの、どうしようもない、ままならないもので病気であることを「告白」することを通じて周囲に理解を求めたかったのだと思われます。ですが、告白することで、思わぬ結果になります。上述の通り、「この投稿を見て本当に励まされました」といったコメントが続々と寄せられ、道端さんご自身も考え方がポジティブに変わったということです。

「思い込み」と「偏見」、そして「恥の変化メカニズム」

ここから、少し専門的な言葉が出てきます。

㈱カルヴォのアドバイザーでもあります、上智大学総合人間科学部心理学科教授の樋口匡貴(まさたか)さんから解説頂きました。

社会心理学では、集団の属性に対する固定的な思い込みを「偏見」と言います。偏見という言葉は「多様性の否定」「画一的に見る」という形で表されます。
似た言葉で「思い込み」というものがありますが、「思い込み」と「偏見」の違いは、「思い込み」そのものには「価値」が含まれていない点です。
言わば「思い込み」の一種が「偏見」とも言うことができ、思い込みの中にも「偏見」もあれば、そうでないものもあります。
心理学では
  1. ステレオタイプ
  2. 偏見
  3. 差別と特定の集団に対しての見方・行動      
で分類しますが、1.は、そういうもんだという価値観、2.は好き・嫌いがある、3.は2.に行動が加わるようになる。例えば、相手に石を投げるとかが該当します。
「恥」というものは基本的に当事者が感じるものですが、芸人が「スベる」とこっちが恥ずかしくなる。そういう場合は「代理羞恥」というケースに該当します。

そして、恥については、当事者と周りの人達の関係で下図の様に象限が分けられるそうです(恥の4象限)。

道端さん自身も元々「乾癬」であることを恥ずかしかった、変だと思っていたはずでしょうが、それに畳みかけるようにSNSで「スーパーフードを摂っているのにも関わらず肌が汚い」と投稿されています。つまり、「自分が変だと思う」、そして「周りも変だと思う」状況にあったと思われます。下図で言うと、右上の象限に該当します。

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それが5月のSNSでの自身の乾癬を「告白」を通じて、乾癬を「変だと思わない」人達による「意外」な励ましによって、道端さん自身も自己肯定され、「変だと思わなくなった」ということで、一気に右上の象限から左下の象限に状況が変化していることが分かるかと思います。

そして、上智大学・樋口先生はこう言います。

恥への対処行動としては大きく2つがあります:

  1. 情動焦点型
  2. 問題焦点型

1.については誰にも会わないとか、ハゲ薄毛であれば「カツラ」をつけるなどの行動を取る。2.についてはその行動(現象)をⒶ周りに変と思わなくさせる、もしくは Ⓑ本人に変と思わなくさせる、のどちらかが必要です。これには、その行動(現象)が一般的であるという認識をさせる長期的な取り組みが必要になるでしょう。そして、恥の情緒反応の対処行動として最もやってはいけないこととして:

当事者が「攻撃」を仕掛けること。つまり逆ギレはNGと仰っています。

もし道端さんが、肌が汚いことを指摘した投稿者に対して「逆ギレ」を起こしていたとすれば、称賛されるようなことは無かったかもしれません。しかし率直に病気であることを告白したことが奏功したのではないかと考えています。

ハゲ薄毛における「恥の変化メカニズム」

次にハゲ薄毛を、この「恥の4象限」で説明したいと思います。

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こうして見てみると、多くのハゲ薄毛男性が隠す・増やすことによって、本来であれば、左下の「自分が変だと思わない&周りは変だと思わない」象限を目指しているつもりが、逆に右上の「自分が変だと思う&周りは変だと思う」もしくは左上の「自分は変だと思わない&周りは変だと思う」の方向に向かってしまっているとが分かります。「隠す・増やす」アプローチで左下の象限に向かう唯一の方法は、自分がつけていることも忘れてしまうくらい、そして周りから『絶対に気付かれない』くらい、隠せているor増やせているケースに限られると思われます。

まとめ

コンプレックスがコンプレックスで無くなる唯一の方法は、「恥の4象限」のうち左下の象限に該当する「自分は変だと思わない&周りは変だと思わない」状況を創り出すことしかありません。

コンプレックスの対処行動の多くは、コンプレックス自体に対して「情動焦点型」アプローチ、即ちコンプレックスを引き起こす問題そのものをどうこうするよりも、目を背けたり、隠すという行動をとりがちです。

しかしながら、情動焦点型アプローチを取る当事者は上手く問題に対処出来ていると思う一方、周囲の人達は「変」と思うことから、当事者と周囲の間に認識ギャップが生まれていると考えられます。

また、周囲の人達はそこまで「変だと思っていない」のにも関わらず、当事者が勝手に「自分は変だと思っている」、社会不安障害と呼ばれるケースもあります。

カルヴォでは、ハゲ薄毛という恥に対して「問題焦点型」でアプローチすることを目指しています。つまり、

  • ハゲ薄毛であることを「周りに変と思わなくさせる」
  • 本人に変と思わなくさせる

どちらも容易ではありませんが、是非挑戦し続けたいと思っています^^