ハゲ・薄毛を「魅せる」社長の日記

美薄毛研究家・劣等感マーケターの松本圭司が日々感じたこと、考えたことを不定期に発信中!

低料金カット店の『弱点』について「利用者視点」で考えてみた

カラーリングもパーマもシャンプーもない、低料金ヘアカット専門店のパイオニアQBハウス」がこの世に生まれたのが1996年11月、今から23年前のことだ。理容店・美容店として利用者に新たな選択肢を提供した意味はそれはそれは大きかったと思う。

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出典:東洋経済オンライン(https://toyokeizai.net/articles/-/262095

実際、1998年度ニュービジネス大賞および1998年度ASIAN INNOVATION AWARDSを受賞するなど、従来理容室として備わっているべき要素を削ぎ落としたビジネスモデルは当時売れに売れたビジネス書「ブルーオーシャン戦略」でも成功事例として紹介されていたので、ビジネスマンの中には記憶がある方も多いことだろう。また、デフレ時代に突入していた日本人男性にとって「QBハウス」にお世話になった人も多いと思う。私も何度かお世話になったうちの一人だ。

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)

https://www.amazon.co.jp/dp/4270000708/ref=cm_sw_r_cp_api_i_dDl7DbMQBEZCG

そんな「QBハウス」に代表される 「低料金カット専門店」の利用者側のメリットについては、

  • とにかく安くて財布に優しい
  • 店の外にある「シグナル灯」で待ち時間が読める
  • カット時間も10分程度と忙しい人には最適
  • 理美容師と話すのが煩わしい人にも最適

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    https://www.opi-net.com/opiken/201210_02.asp

などが挙げられるだろう。

しかし、メリットがあるということをはそれを裏返せば「デメリット」にもなり得るということを考えてみたい。

業界にいなくとも多くの人は、低料金カット専門店のビジネスモデルは、「如何に多くの来店客を可能な限り短時間で捌くか。」これに尽きることを知っているはずだ。

10分で必ず1名の顧客をこなさないと採算ラインに乗らないとされるこのビジネスモデルでは当然ながら、顧客それぞれとのコミュニケーションは最低限のものにせざるを得ない。当然、顧客はその点を喜んで受け容れるからゆえ、低料金でサービスを受けられるのである。

また、特定のスタッフに指名が集中してしまうと、そのスタッフを待つお客さんを他のスタッフがカットすることが出来ず、アイドリング時間が発生してしまうので「指名制」を採用することはビジネスモデルを破綻させてしまう。即ち、顧客側としては「この人にカットして貰いたい」と思っても叶わないリクエストになってしまうのだ。

このようなスタッフと顧客との間で「一期一会的な関係」を余儀なくされる低料金カット専門店の最大の弱点は、「理美容師と顧客との間に人間関係が作れないこと」であるが、これに気づいている利用者はどれほど存在しているだろうか。

特に薄毛に悩んでいて、髪が少ないから出来るだけおカネをかけたくないという利用者の心情は低料金カット専門店を利用していた私も分からなくもないが、実はその分、髪に向き合う機会を自ら逸していることに繋がる。

とはいえ、既存の理美容室が低料金カット専門店に対して差別化・差異化できるほどの価値提供が出来ていないところが多いからこそ、低料金店に顧客を持っていかれたままになっているともいえる。

本来であれば、お金について考える気になったらその相談相手として「ファイナンシャルプランナー」を探そうとなるのと同じように、薄毛について相談したいと思ったら、しかるべき相手を見つけないといけないはずだが、相談出来るほど信頼の出来る理美容師に出会えるかが現時点では「運」まかせになっているのが現状だ。特に髪に悩みのある利用者は「伴走者」となる理美容師がいるか否かで店の選択をすべきだろう。

このように実は利用者側が「価格」だけを基準に理容・美容の技術サービスを購入すると大事な視点を見落とすことになりかねない。

多くの人は特に無形のものに対しての価値評価を得意としていないため、表面上の価格に左右されがちである。しかし、利用者として「店側の本質的な提供価値が何なのか」、また「何を客側に諦めさせているのか」を見極める力が無いと、何でもかんでも「安ければ良い」という判断に陥り、結果として相応の支払いに応じたリターンの享受となることを予め肝に銘じておく必要がある。 

供給者側さえも気付いていない利用者の「デメリット」「不利益」は結局、利用者自ら気付くしかない。

今のご時世、やたらと「コスパコスパ」と言われがちではあるが、「コスト」と「パフォーマンス」だけで判断すると見落とすものがある、と思う。

業界を停滞させる、滅ぼす原因は何も供給側だけにあるのではない、利用者の賢明さも大いに影響するのではないだろうか?