ハゲ・薄毛を「魅せる」社長の日記

美薄毛研究家・劣等感マーケターの松本圭司が日々感じたこと、考えたことを不定期に発信中!

「メタモルフォーゼ」(メタモル)というパラダイムシフト

サムネイルの写真をご覧になって衝撃を受け、思わずリンクをクリックしてしまった方もいるかもしれない笑

今日(2019年5月28日)は、毛髪・美容・健康のウェルネス産業の㈱アデランスのメディアセミナーというものに参加させて頂く機会に恵まれた。

会場に到着し、最前列に陣取ると、スライドには、

令和の新時代
髪想を変えて人生を豊かにする
メタモルフォーゼのすゝめ

とある。

“メタモルフォーゼ”とはなかなか聞き慣れない言葉だが、ドイツ語で、変化、変身を意味し、外見や見た目を変えることで気持ちを切り替えたり気分を上げることを意味する、らしい。

ちなみに案内には今回のセミナーの目的について、こう書かれていた:

  1. “ウィッグは薄毛対策である”という固定概念を払拭し、セルフプレゼンテーションのツールであるというパーセプション(認識)チェンジを図ること
  2. 増毛市場の実態および今後の展望を発表し、アデランスとして打ち出していきたいブランディングイメージを提示すること
  3. 幅広い年代の消費者に対して、ウィッグをより身近に感じてもらい、自らのイノベーションに活用してもらうこと

会場で手渡された資料で初めて知ったのだが、私が勝手に親近感を感じている、「ストーリーとしての競争戦略」の著者である、一橋大学大学院教授の楠木建さんは2017年よりアデランス社のアドバイザーをされているらしい。

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詳しくはこちらのURLをご確認頂ければと思うのだが、同社が日本が「平成」から「令和」に切り替わるバタバタしていたタイミングに行った調査に基づき、以下考察を発表している:

  • 日本人男性の75.9%が“メタモルフォーゼ”に興味がある
  • “メタモル市場”は、薄毛対策市場の5倍の2兆9,000億円(参考:国内化粧品市場は約2兆5,000億円<㈱富士経済調査による>)
  • “メタモルフォーゼ”で得られるものは、“自分への自信”
  • 今後の自己プレゼンは「髪型・ヘアスタイル」で

prtimes.jp

会場には同社の津村社長のほか、アドバイザーの楠木教授も登壇され、今後の「メタモル市場」について語ってくれた。楠木教授らしくなかなか興味深い視点があったので、共有したい:

  • バンド演奏を趣味とする楠木教授にとって「ウィッグ」をカブることはここ2年くらい続けている「異」日常、楽器を新調するよりもパフォーマンスは5割増しになった
  • 「非」日常では需要が大きくならない(ハロウィーンで被るウィッグは翌日には捨てられるのが普通)
  • 「異」日常であれば、市場創造になるのではないかと考えている
  • 少子化が進む日本で人口増が非現実的である以上、市場を大きくするには「分身」という方法になる
  • 「分身」すれば市場が大きくなる=1人の人間が家を2軒保有する(別荘を持つ)のと同じ(家を2軒分買えば、家具も2軒分揃えることになる)
  • それには消費者自身が持つ「異」日常の世界を自己認識することが必要
  • マーケティング的には、楠木教授のような嗜好を持つ中年ロッカー向けに「革ジャン市場」と繋がってコラボレーションすることも可能
  • カツラ・ウィッグというプロダクトは「ユーザーがユーザーであることが知られていない」(=これすごいだろ!っていう人はいない)
  • 商品として良いのに、口コミが発生しないため、他ブランドとの差が分かりにくいのが難点
  • 口コミが大事なのに、それが使えない(口コミが無い、SNSビフォーアフターを掲載する人はいない)
  • しかし、「異」日常的にウィッグが使われることになれば、メタモル需要に加えて、従来の悩み需要に良い波及効果が生まれる可能性がある

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それにしても、頭皮を“隠す”ための手段として“コソコソ”使うのが当たり前であったカツラ・ウィッグのリーディングカンパニー自ら、セルフプレゼンテーションのツールとして訴求するようになってきたことをどう理解すれば良いのだろうか?

読者の中でもご存知・ご記憶がある方もいると思うが、アデランスは1969年に設立されたカツラメーカーだ。

2000年頃までは積極的なテレビCMなどを背景に、右肩上がりで成長を続けてきたが、2008年以降米国ヘッジファンドが株を買い占め、大株主になってから社長の交替を繰り返しながら業績が低迷し、ついに社名を「ユニヘアー」に変更するなど経営が迷走する。2011年には最終利益で232億円という巨額の赤字を計上したのち、創業社長がカムバックし、利益はV字回復を果たすなど、経営も軌道に乗り始めたと思われた矢先に、2016年2月期には最終赤字が19億円に達するなど、再び経営に暗雲が立ち込めてきた中で、2017年2月10日に株式の上場廃止という決断に至っている。

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出典:アデランス社開示情報を元に作成

上場廃止となったため、開示情報も限定的になっているため、今現在どのような業績となっているかは外からは窺い知ることは出来ないが、恐らく劇的に業績改善しているとは想像しにくい。

しかし、今日のようなセミナーやリリースの内容を踏まえると、このような言わば、これまでの「隠す・増やす」というコンセプトから、潜在的な「変身」願望を炙り出しながら、半ば捨て身で新市場を見出そうとする姿勢には好感が持てる。それは同時に、それだけ世の中の価値観が変化し、対応せざるを得なくなっていることの裏返しとも言える。まさに「パラダイムシフト」が起きているといっていいだろう。

同時に、アデランスの現経営陣やアドバイザーである楠木建教授が、同社と業界にどのような「ストーリー」を描いていくのかについて非常に関心が高まった。

上述したが、「異」日常を作り出すことで、他業界との連携が始まるかもしれないという点において、カツラ・ウィッグ業界を基軸に様々な業界が市場活性化されるのではないかとワクワクしてきたのが正直な感想だ。

最後になるが、私はカルヴォや、日本美USUGE協会の活動が、ダイバーシティ時代の到来と同時に「コンプレックスに抗うのではなく、寄り添えるものでありたい」と思い・願い続けていたものの、イマイチ何の市場でプレーしているのかが分からなかった。

アデランスが今回提示した「メタモルフォーゼ(メタモル)市場」は決して、ありのままを肯定するというスタンスでも無いため、カルヴォのコンセプトと同一とは言えないかもしれない。しかし、変身願望を叶えることで「自信」を得られるという部分については方向性は同じと言えるかもしれない。

従って、ようやく自分達は「セルフコンフィデンス<=自信>(セルコン)市場」というところにいると確認できたように思う。