ハゲ・薄毛を「魅せる」社長の日記

美薄毛研究家・劣等感マーケターの松本圭司が日々感じたこと、考えたことを不定期に発信中!

新型コロナウィルス感染症で大変な時期に未来を予想してみる

新型コロナウィルス感染症志村けんさんが亡くなったりしてる最中に書いてる場合じゃないのかもしれないが、ちょっと考えてることをメモがわりに書いとこう。

私以上の世代の人達の多くは特に感じているかもしれないが、昔はあり得なかったようなことが、今は高頻度で発生するような時代だ。

昔は今みたいに簡単に大雨洪水警報なんて出なかったし、出たら出たでビショビショになりながら学校から家に帰るのだが、子供心に早く帰れると喜んだものだ。

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しかし、もはや「想定外」というもの無くて、何でも「想定内」として覚悟しておかないといけないのかもしれない。

それが「潮目」が変わるような出来事が私にとっては1995年だったような気がする。阪神大震災阪神高速が倒壊するなんて誰にとっても「想定外」だったし、サリン事件しかり。この四半世紀でインターネット無しでは生きていけなくなってるところに、「東日本大震災」という潮目が、そして今回の「新型コロナウィルス感染症」という潮目がやってきた。

ロックダウンやオーバーシュートという言葉が飛び交い、実際そうなった海外の大都市の様子をTVやYouTubeなどで見てると、日本ももうそこまで来てるのはよく分かる。

で、この騒ぎの中で自粛を余儀なくされている中で「リモート」がキーワードになっているのは周知の通りだ。人間に与えられた移動の権利が奪われるのは、それまでの当たり前が奪われるゆえ、ものすごいストレスだ。

このまま自宅にいる時間が当たり前になるとどうなるんだろうと想像を膨らませると、実は映画のコンテンツになりそうな「リアルとバーチャルが入れ替わる世界」が来るのではないか?と思ってしまう。

つまり、「人と接触しないこと」が通常モードになり、「リアル体験が出来ること」が超貴重なことになり、実際に体験しようとすると、相応のリスクとコストがかかるという世界が来るのではないかという、あながち飛躍しているとも言えないことが来るんじゃないかと。

そうなるとバーチャルの世界を不便、違和感を感じる人間にとってはかなりしんどくなるはず。既に言われているが、Web会議ツール「Zoom」で会議をし、オンラインで成果を出せる人間が生き残る時代になる。それだけで無く、多くの活動を「している気になる」技術で満足せざるを得ない状況になるのではないか(リモート飲み会しかり)。

具体的にはどんなことが起きそうか思いつくままに書いてみよう:

  • そもそも富裕層しか外に出れないなんてこともあるかもしれない
  • ウィルスの付着しにくい素材で出来たアパレルの出現
  • 下手したら防護服がスーツ代わりになる?
  • マスクの代わりにヘルメットを被って外に出ないといけない?
  • リモート〇〇、エア〇〇というサービスがこれまで以上に出てくる
  • プライベート空間でAR、VRを使ったエクササイズ、レッスン類の一層のサービス&技術向上(なのでかつて一大ブームとなった、ビリーズブートキャンプが今流行っていたりする笑)
  • 代行ビジネスが加速する(買い物代行などはシニア世代だけでなく、独身世帯でも一般化する?)

今のタイミングで医療以外で急加速で技術進歩がありそうなのは:

  • ドローン物流(そもそも、人手不足で配達員が足りない状況にこのコロナウィルス。段ボールに付着したウィルスの残存期間はどの素材よりも長くて丸3日らしい)
  • AR・VR技術(どれだけリアルっぽく体験出来るかが大きな価値になる?)
  • 視覚・聴覚に加えて、触覚・嗅覚・味覚のバーチャル上での再現性のニーズ拡大
  • バーチャルでのモノづくり(現場に居ずしてAR・VRとかを無理やりにでも使って開発+生産+保守活動をやるとか?)
  • 居住空間に関わるイノベーション(在宅時間が長くなるため、個人の住居への関心がこれまで以上に高まる?)

あたりか。

既にイタリアでは外出する口実になる「犬の貸し出し」サービスや、日本でもリモートワークを「ちゃんと」してることを装うことの出来る、マウスを自動的に机の上でグルグル回す装置(PC上で「在席中」と表示され続けるらしい)が出現してるらしいので、これを機に色んな知恵が絞り出されるに違いない。

コロナウィルス相手に長期戦になることを覚悟して、慎重かつ大胆に過ごしたいところだ。

「薄毛成人男性の好感度に影響する諸要因~髪型、衣装、頭部比率~」の研究が学術論文として掲載されました

相変わらずのだいぶ間が空いての投稿です(^^;)

この研究を構想してから3年弱。ようやく学術論文として認められ、日本顔学会の学会誌に掲載されました。本当に良かったです。

大阪大学大学院人間科学研究科の森川和則教授、富田瑛智助教と共に薄毛男性をどうハゲを隠さず、髪を増やさない方法で好感度を上げることが出来るのかについて研究してきました。

とにかく研究用の丁度いい薄毛モデルを集めるだけで苦戦どころか大苦戦を強いられ(逆にスキンヘッドや短髪に刈り込み、既に悩みから解放されている男性モデルは比較的見つけやすい)、しかも条件に合わせてモデルさんの髪型変えたり、服を着替えてもらったり。

刺激画像を撮影した日はモデルさん達も関わってくれている人達も最後は疲労困憊でした。これからも誰もこんなことをしようなんて思わないかもしれないです。だから「世界初」のバカげた研究なんだろうけど(笑)

でも、前々からなんとなく「ひょっとしてそうじゃない?」と感じていることを証明出来るというのは「やっぱりそうだったか〜」っていう達成感がありますね。

この研究に携わって下さったモデルさん達、大阪府理容生活衛生同業組合様等、多くの方々に感謝申し上げます。

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『 逆行マーケティング』を見極める

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先日は身体的コンプレックスのマーケティングアプローチとして、逆行、公式美・公式機能、順行、新価値提案の4種類が存在していることを書きました。

 

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身体的コンプレックスのマーケティングアプローチ©松本圭司

 

身体的コンプレックスに関わるマーケティングが行われるのは、コンプレックスを感じている「いずれかのマインドステージにいる当事者」を逆行、公式美・公式機能、順行、新価値提案のいずれかのマーケティング手法を用いて「何かしらのモノ・サービス」の購入and/or消費を促すことが目的と考えています。

 

このいずれかのマインドステージですが、身体的コンプレックスに関わる登場人物は恐らく下記の4つのマインドステージ(「元の自分に戻りたい層」「諦め・迷える層」「そもそも気にしていない層」「コンプレックスを乗り越えた層」)のどれかに属しているケースが殆どであると推定しています。

 

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©松本圭司

 

それぞれの層向けに行われる、あるいは行われている可能性のあるマーケティングアプローチは上図の↑の先に示しています。例えば「元の自分に戻りたい層」向けには主に「逆行マーケティング」が展開されていると考えられます。

 

マーケティングの難易度は、比較的容易な順番に、「逆行→公式美・公式機能→新価値提案→順行」、であると考えています。理由としては、全く未知の新しい価値を受け容れさせるよりも、過去に有していたものを取り返すことが出来る方に人は動かされることが多いからです。

 

今日はこの「逆行マーケティング」についてもう少し詳しくみてみたいと思っています。

 

当事者が元々獲得していた状態、つまり時間を巻き戻す「逆行マーケティング」の王道は至って簡単です。「昔の貴方のほうが素敵です」といった、過去の眩しかった自分を懐古させるコピーに心が引っ張られるとすれば、それだけ効果的なメッセージだとも言えます。

 

頭髪を隠す・増やす系、またはダイエット系のモノ・サービスは高度成長期以降に日本で広がったとされていますが、一貫してこのトーンでのメッセージが発信されてきています。

 

今の自分を受け容れられない状況であればあるほど、このような「昔の貴方に戻りません?」的なワードはグサリと刺さるはずです。逆にこのマーケティングが効かない層は、昔の自分に戻りたいという関心・興味が無い「気にしていない層」が該当します。

 

このマーケティングアプローチのポイントは「何かしらのモノ・サービス」の購入を促すことで、結果としてコンプレックスを感じている当事者に心理的変化が”実際に”発生するかどうかにあります。

 

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身体的コンプレックスのマーケティングアプローチによる羞恥度の変化イメージ©松本圭司

 

例えば、ダイエットに関わるモノ・サービスであれば、結果が出ている、出ていないかがハッキリ分かります。つまり、誤魔化したモノ・サービスでは本人の心理的状況(主に羞恥心)は改善されません。逆に減量が成功した場合の心理的状況は大幅に改善されます。

 

対して、いわゆる頭髪の隠す・増やす系のモノ・サービスは実際に植毛手術を受けるのでなければ、自毛で解決をしていないため、多くの場合「後ろめたさ」や「羞恥心」が完全に払拭される状況にはならないでしょう。

 

つまり、読者の皆さんがご自分の意識として感じているコンプレックスとなる事象を「元の状態に戻したい」と思った場合は無意識に「逆行マーケティング」で提供されるモノ・サービスを探している可能性があります。

 

しかし、そのモノ・サービスを利用することでコンプレックスを感じるために現れる「羞恥心」が払拭できるか、あるいは少なくとも低減できるかどうかを予め見当をつけることで、その購入・消費が本質的な解決に至るのかを見極めることが出来ると考えています。

身体的コンプレックスのマーケティングアプローチについて考えてみました

世の中にはどれほどの人が身体的コンプレックスに悩んでいるのでしょうか?

ちなみに2015年6月にドイツの市場調査機関GFK(Growth from Knowledge)が「世界外見満足度調査」を行い、その結果を発表したことが当時話題になりました。

調査対象となったのは米国や中国、ドイツ、メキシコ、日本など22の国や地域の15歳以上の2万7000人とのことですが、国別に見ると、自分の外見に対する満足度に大きな差が出ました。満足度が最も高かったのはメキシコで「比較的満足」、「非常に満足」の割合が74%に達し、次に高かったのはトルコで、ブラジルとウクライナが3位となっていました。

一方、自分の外見に最も満足していないのは日本人で、「比較的満足」、「非常に満足」との回答は26%にとどまったそうです。次に同割合が低かったのは、韓国で34%。香港が38%とアジア各国が続いていました。

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このように日本という国は自身の外見に対しての自己評価が世界で最も低い、裏返せばコンプレックス業界が盛んになる土壌が整っているといっても過言ではありません。

そんな日本では身体(カラダ)に関わるコンプレックスビジネスが長年に渡り、しかも多数展開されているのにも関わらず、身体的コンプレックスに特化したマーケティング手法、マーケティングアプローチについて詳説された文献を目にすることはありません

なぜこのようなテーマで書こうと思ったかと言いますと、身体的コンプレックスに関わる人達と接している中で、多くの方々がコンプレックスを簡単に取り扱えるというご理解をされていると感じる機会があったため、この点についての誤解を解くことは出来ないだろうかと思ったのが理由です。

これまで世の中に展開されている身体的コンプレックスに関わるモノ・サービスが数多く提供されてきていると思いますが、私は大まかに言って、下記の4つのマーケティングアプローチのいずれか、もしくはコンビネーション(組み合わせ)で提供されていると考えています。

  1. 逆行マーケティング 
  2. 公式美・公式機能マーケティング
  3. 順行マーケティング
  4. 新価値提案マーケティング

それではそれぞれのマーケティングアプローチについて見ていきたいと思います。

 

まず『1. 逆行マーケティング』ですが、これはその名の通り、時間を逆行、つまり巻き戻すことによって、身体的コンプレックスを解消させようとするアプローチです。

人間は若さや元々あった、存在していたことに対しての憧れが強い動物と言われています。つまり現状の自分の姿を受け容れられないと感じる人であればあるほど、「昔に戻れる」という言葉に誘導されがちです。そのため、供給側は対象顧客に対してかなり高額のモノ・サービスを提供するか、「若い状態」「失ったものがある状態」を維持させるためにサブスクリプション的なビジネスモデルを展開するケースが多くみられます。

男性が薄毛に悩み、植毛手術を受けたり、カツラを装着するのは良く知られた実例になるかと思います。

 

次に『2. 公式美・公式機能マーケティング』です。これは世の中で「そうだったらいいよね」「そうあるべきものだよね」といった、社会通念的に「ありたい姿」に導くアプローチです。

例えば女性の「二重瞼」ですが、元々一重瞼の人が整形手術を受けて二重瞼になろうとするのは、「二重瞼の方が一重瞼よりも可愛い」という社会通念が存在しているからでしょう。先述の「逆行マーケティング」と「公式美・公式機能マーケティング」の大きな違いは、コンプレックス保持者が元々コンプレックスとなるものを物理的に有していたか否かであると考えています。

つまり、元々スリムな女性が何らかの原因で肥満になった挙げ句、ダイエットをしたいという思いに駆られる場合は、時間を巻き戻すことによる「逆行マーケティング」アプローチが当てはまり、生まれつきぽっちゃりしている女性に対してスリムであることが理想的であるというメッセージを送ることで需要を喚起しようとするのであれば、それは「公式美・公式機能マーケティング」に相当すると考えられます。

つまり、同じ現在肥満であることにコンプレックスを持ち、痩せたいと思う女性が2人いるとしても、元々痩せていたのか、それとも生まれつき肥満体質であったのかによって、異なったマーケティングアプローチが必要なのではないかと考えています。

また、この「公式美・公式機能」というものは時代と共に移り変わるのが特徴です。私が幼少の頃は「左利き」であることは非常にネガティブに捉えられていた時代でした。ですので、お箸を使う行為、また書く行為については右手に直された記憶があります。

ですが、最近目にしたネットニュースではトレンドがかなり様変わりしているようで、もはや左利きの子を右利きに矯正するようなことはしないようになっているそうです。

ちなみにこの公式美・公式機能マーケティングで未だに成功例が見当たらないのが、「背を伸ばす」というモノ・サービスです。1970年代後半から80年代前半にかけて割と多くの家庭で背が伸びる、伸びないと言われていた「ぶら下がり健康器」というものを目にしましたが、これだけ科学技術が発達しても、一般向けサービスが販売されない(目にすることがない)のはそれだけ難しいということなのかもしれません。

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LOHACOウェブサイトより(https://lohaco.jp/product/N050645/

3. 順行マーケティング』ですが、「順行」という言葉自体、あまり聞き慣れないかもしれません。日本語の意味としては「順序に従って逆らわずに進んでいくこと」とされていますが、その意味の通り、身体的コンプレックスを当事者自ら受け容れ、起きゆく身体的変化に対してマーケティングを行うことを指しています。

今ではセクハラ案件として訴えられると思いますが、一昔前までは、ぽっちゃりした女性に対しては「デブ」という言葉を割と簡単に使っていた時代がありました(これは男性に対しても同様です)。ですが、多様性(=ダイバーシティ)という言葉が日本に浸透したおかげで、「ぽっちゃり女子」という言葉もできた上にやや大きめの女性向けのブティック(例:ニッセンの“スマイルランド”)も生まれるようになりました。

www.nissen.co.jp

このような順行マーケティングが奏効するには、社会全体が対象となるコンプレックス(上記の場合ですと、肥満であること)をもはや当たり前となる風土・文化が醸成されている状況が存在していることが前提になると考えています。

 

最後に『4. 新価値提案マーケティング』です。これは逆行でも、公式美・公式機能でも、順行でもないものが相当します。一見すると「公式美・公式機能マーケティング」と混同してしまいがちですが、既述した通り、公式美・公式機能は既に社会通念上、「こういうのが良いよね」というものであるのに対し、新価値提案はこれまでに無かったものを提供するという点が特徴です。例えば、昨年あたりからジワジワと盛り上がりを見せつつあるのが、「男性向けメイクサービス」です(例:イケメン製作所)。

news.yahoo.co.jp

新価値提案マーケティングの多くは、周りの同性がしているのであれば、あるいは異性の声として「アリだよね」という声もあることを認識した上で、対象顧客が自分のライフスタイルに取り入れていくものが多いです。ですので、ユーザーにあえて新規の身体的付加価値として気づかせ、新たに「身体(カラダ)」にインストールさせていく機能のように捉えることも出来ると思います。

 

ということで、具体的にどのモノ・サービスがどのマーケティングアプローチに相当するのかについてザッとまとめてみたのが、下記のマトリクスです。

皆さまお馴染みのモノ・サービスを男女、そして両性別毎に思いつきレベルで整理しているので、ひょっとしたら、ご自分がどのマーケティング手法に乗せられているのかについてもっとイメージできるかもしれません。

 

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身体的コンプレックスのマーケティングアプローチ©松本圭司

 

以上、何かの参考になれば幸いです。

今年もこんな感じで思いつくがままに書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

2019年もお世話になりました&"note"はじめます^^

晦日ですね^^

この日を迎えると、ここ数年は「あっという間の1年だったなぁ」と思う1日である一方、3年といったまとまった単位で振り返ると「まだ3年かぁ」と思ったり、最近は時間感覚がよく分からなくなってます(汗)

とはいえ、2019年の今年は4月末に「平成」から「令和」に元号が変わるという忘れられない1年になりました。来年2020年も東京オリンピックを迎えるということで様々なドラマが予想される1年になりそうです。

で、これまで「はてなブログ」で好き放題発信させて頂きましたが、2020年に切り替わるタイミングで私の周りでもユーザーが増えている「note」でも発信をしたいと思います。が、正直なところブログと何が違うかもよく分かってません(苦笑)。なので、またブログに戻るとかもあるかもですが、何事もやってみないと分からないので、まずは試行錯誤してみたいと思います。

ということで、2019年もお世話になり、誠にありがとうございました。

2020年もどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

note.com

SOSを出せない『サブスクの奴隷 = Slaves of Subscription』

隠す・増やす系の企業が展開する事業戦略の優れているところは、髪に悩む人達はそのような企業から提供されるモノ・サービスを続けても満足度は得られるものの、根本的な薄毛であることを恥ずかしいと思う「羞恥度」が下がらないどころか、サービスを辞めたくとも、隠していた(あるいは増やしていた)ことを周囲の人達に"バレたくない"感情を利用することにより、仕方なくモノorサービス利用を続けさせ、本人を八方塞がりに追い込める点だ。

つまり、コンプレックス保有者当事者を「生かさず、殺さず」状態に留まらせることが出来るのがこのビジネスモデルの秀逸性とも言える。

一旦、このビジネスモデルにハマってしまう薄毛コンプレックス保有者は、周囲の人たちに隠している・増やしているのをバレないようにするため、漏れなく月単位あるいは年単位でメンテナンス費用を支払い続ける必要がある。これは月額固定でコストを支払わせる『サブスクリプションビジネスモデル』に他ならない。

このように隠す・増やす系のモノやサービスに依存してしまい、SOSを出したくとも出せない薄毛コンプレックス保有者を、表現はやや辛辣ではあるが、SoS(Slaves of Subscription=サプスクリプションの奴隷=サブスクの奴隷)と呼ぶことも出来るだろう。

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この『サブスクの奴隷』から解放される方法は二つだ。元の「薄毛を気にし始めた地点に戻る」か、一気に「薄毛を魅せる」ところまで振り切るか。このいずれかを選べない間は奴隷で居続けるしかない。

髪に悩んだら、闇雲にその場の感情に任せた選択・判断を行うのではなく、その選択が将来、経済的のみならず、感情的にもどのような結果がもたらされるかをプラス面、マイナス面の両面で検討することをおススメしたい。

低料金カット店の『弱点』について「利用者視点」で考えてみた

カラーリングもパーマもシャンプーもない、低料金ヘアカット専門店のパイオニアQBハウス」がこの世に生まれたのが1996年11月、今から23年前のことだ。理容店・美容店として利用者に新たな選択肢を提供した意味はそれはそれは大きかったと思う。

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出典:東洋経済オンライン(https://toyokeizai.net/articles/-/262095

実際、1998年度ニュービジネス大賞および1998年度ASIAN INNOVATION AWARDSを受賞するなど、従来理容室として備わっているべき要素を削ぎ落としたビジネスモデルは当時売れに売れたビジネス書「ブルーオーシャン戦略」でも成功事例として紹介されていたので、ビジネスマンの中には記憶がある方も多いことだろう。また、デフレ時代に突入していた日本人男性にとって「QBハウス」にお世話になった人も多いと思う。私も何度かお世話になったうちの一人だ。

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)

https://www.amazon.co.jp/dp/4270000708/ref=cm_sw_r_cp_api_i_dDl7DbMQBEZCG

そんな「QBハウス」に代表される 「低料金カット専門店」の利用者側のメリットについては、

  • とにかく安くて財布に優しい
  • 店の外にある「シグナル灯」で待ち時間が読める
  • カット時間も10分程度と忙しい人には最適
  • 理美容師と話すのが煩わしい人にも最適

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    https://www.opi-net.com/opiken/201210_02.asp

などが挙げられるだろう。

しかし、メリットがあるということをはそれを裏返せば「デメリット」にもなり得るということを考えてみたい。

業界にいなくとも多くの人は、低料金カット専門店のビジネスモデルは、「如何に多くの来店客を可能な限り短時間で捌くか。」これに尽きることを知っているはずだ。

10分で必ず1名の顧客をこなさないと採算ラインに乗らないとされるこのビジネスモデルでは当然ながら、顧客それぞれとのコミュニケーションは最低限のものにせざるを得ない。当然、顧客はその点を喜んで受け容れるからゆえ、低料金でサービスを受けられるのである。

また、特定のスタッフに指名が集中してしまうと、そのスタッフを待つお客さんを他のスタッフがカットすることが出来ず、アイドリング時間が発生してしまうので「指名制」を採用することはビジネスモデルを破綻させてしまう。即ち、顧客側としては「この人にカットして貰いたい」と思っても叶わないリクエストになってしまうのだ。

このようなスタッフと顧客との間で「一期一会的な関係」を余儀なくされる低料金カット専門店の最大の弱点は、「理美容師と顧客との間に人間関係が作れないこと」であるが、これに気づいている利用者はどれほど存在しているだろうか。

特に薄毛に悩んでいて、髪が少ないから出来るだけおカネをかけたくないという利用者の心情は低料金カット専門店を利用していた私も分からなくもないが、実はその分、髪に向き合う機会を自ら逸していることに繋がる。

とはいえ、既存の理美容室が低料金カット専門店に対して差別化・差異化できるほどの価値提供が出来ていないところが多いからこそ、低料金店に顧客を持っていかれたままになっているともいえる。

本来であれば、お金について考える気になったらその相談相手として「ファイナンシャルプランナー」を探そうとなるのと同じように、薄毛について相談したいと思ったら、しかるべき相手を見つけないといけないはずだが、相談出来るほど信頼の出来る理美容師に出会えるかが現時点では「運」まかせになっているのが現状だ。特に髪に悩みのある利用者は「伴走者」となる理美容師がいるか否かで店の選択をすべきだろう。

このように実は利用者側が「価格」だけを基準に理容・美容の技術サービスを購入すると大事な視点を見落とすことになりかねない。

多くの人は特に無形のものに対しての価値評価を得意としていないため、表面上の価格に左右されがちである。しかし、利用者として「店側の本質的な提供価値が何なのか」、また「何を客側に諦めさせているのか」を見極める力が無いと、何でもかんでも「安ければ良い」という判断に陥り、結果として相応の支払いに応じたリターンの享受となることを予め肝に銘じておく必要がある。 

供給者側さえも気付いていない利用者の「デメリット」「不利益」は結局、利用者自ら気付くしかない。

今のご時世、やたらと「コスパコスパ」と言われがちではあるが、「コスト」と「パフォーマンス」だけで判断すると見落とすものがある、と思う。

業界を停滞させる、滅ぼす原因は何も供給側だけにあるのではない、利用者の賢明さも大いに影響するのではないだろうか?