ハゲ・薄毛を「魅せる」社長の日記

美薄毛研究家・劣等感マーケターの松本圭司が日々感じたこと、考えたことを不定期に発信中!

身体的コンプレックスのマーケティングアプローチについて考えてみました

世の中にはどれほどの人が身体的コンプレックスに悩んでいるのでしょうか?

ちなみに2015年6月にドイツの市場調査機関GFK(Growth from Knowledge)が「世界外見満足度調査」を行い、その結果を発表したことが当時話題になりました。

調査対象となったのは米国や中国、ドイツ、メキシコ、日本など22の国や地域の15歳以上の2万7000人とのことですが、国別に見ると、自分の外見に対する満足度に大きな差が出ました。満足度が最も高かったのはメキシコで「比較的満足」、「非常に満足」の割合が74%に達し、次に高かったのはトルコで、ブラジルとウクライナが3位となっていました。

一方、自分の外見に最も満足していないのは日本人で、「比較的満足」、「非常に満足」との回答は26%にとどまったそうです。次に同割合が低かったのは、韓国で34%。香港が38%とアジア各国が続いていました。

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このように日本という国は自身の外見に対しての自己評価が世界で最も低い、裏返せばコンプレックス業界が盛んになる土壌が整っているといっても過言ではありません。

そんな日本では身体(カラダ)に関わるコンプレックスビジネスが長年に渡り、しかも多数展開されているのにも関わらず、身体的コンプレックスに特化したマーケティング手法、マーケティングアプローチについて詳説された文献を目にすることはありません

なぜこのようなテーマで書こうと思ったかと言いますと、身体的コンプレックスに関わる人達と接している中で、多くの方々がコンプレックスを簡単に取り扱えるというご理解をされていると感じる機会があったため、この点についての誤解を解くことは出来ないだろうかと思ったのが理由です。

これまで世の中に展開されている身体的コンプレックスに関わるモノ・サービスが数多く提供されてきていると思いますが、私は大まかに言って、下記の4つのマーケティングアプローチのいずれか、もしくはコンビネーション(組み合わせ)で提供されていると考えています。

  1. 逆行マーケティング 
  2. 公式美・公式機能マーケティング
  3. 順行マーケティング
  4. 新価値提案マーケティング

それではそれぞれのマーケティングアプローチについて見ていきたいと思います。

 

まず『1. 逆行マーケティング』ですが、これはその名の通り、時間を逆行、つまり巻き戻すことによって、身体的コンプレックスを解消させようとするアプローチです。

人間は若さや元々あった、存在していたことに対しての憧れが強い動物と言われています。つまり現状の自分の姿を受け容れられないと感じる人であればあるほど、「昔に戻れる」という言葉に誘導されがちです。そのため、供給側は対象顧客に対してかなり高額のモノ・サービスを提供するか、「若い状態」「失ったものがある状態」を維持させるためにサブスクリプション的なビジネスモデルを展開するケースが多くみられます。

男性が薄毛に悩み、植毛手術を受けたり、カツラを装着するのは良く知られた実例になるかと思います。

 

次に『2. 公式美・公式機能マーケティング』です。これは世の中で「そうだったらいいよね」「そうあるべきものだよね」といった、社会通念的に「ありたい姿」に導くアプローチです。

例えば女性の「二重瞼」ですが、元々一重瞼の人が整形手術を受けて二重瞼になろうとするのは、「二重瞼の方が一重瞼よりも可愛い」という社会通念が存在しているからでしょう。先述の「逆行マーケティング」と「公式美・公式機能マーケティング」の大きな違いは、コンプレックス保持者が元々コンプレックスとなるものを物理的に有していたか否かであると考えています。

つまり、元々スリムな女性が何らかの原因で肥満になった挙げ句、ダイエットをしたいという思いに駆られる場合は、時間を巻き戻すことによる「逆行マーケティング」アプローチが当てはまり、生まれつきぽっちゃりしている女性に対してスリムであることが理想的であるというメッセージを送ることで需要を喚起しようとするのであれば、それは「公式美・公式機能マーケティング」に相当すると考えられます。

つまり、同じ現在肥満であることにコンプレックスを持ち、痩せたいと思う女性が2人いるとしても、元々痩せていたのか、それとも生まれつき肥満体質であったのかによって、異なったマーケティングアプローチが必要なのではないかと考えています。

また、この「公式美・公式機能」というものは時代と共に移り変わるのが特徴です。私が幼少の頃は「左利き」であることは非常にネガティブに捉えられていた時代でした。ですので、お箸を使う行為、また書く行為については右手に直された記憶があります。

ですが、最近目にしたネットニュースではトレンドがかなり様変わりしているようで、もはや左利きの子を右利きに矯正するようなことはしないようになっているそうです。

ちなみにこの公式美・公式機能マーケティングで未だに成功例が見当たらないのが、「背を伸ばす」というモノ・サービスです。1970年代後半から80年代前半にかけて割と多くの家庭で背が伸びる、伸びないと言われていた「ぶら下がり健康器」というものを目にしましたが、これだけ科学技術が発達しても、一般向けサービスが販売されない(目にすることがない)のはそれだけ難しいということなのかもしれません。

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LOHACOウェブサイトより(https://lohaco.jp/product/N050645/

3. 順行マーケティング』ですが、「順行」という言葉自体、あまり聞き慣れないかもしれません。日本語の意味としては「順序に従って逆らわずに進んでいくこと」とされていますが、その意味の通り、身体的コンプレックスを当事者自ら受け容れ、起きゆく身体的変化に対してマーケティングを行うことを指しています。

今ではセクハラ案件として訴えられると思いますが、一昔前までは、ぽっちゃりした女性に対しては「デブ」という言葉を割と簡単に使っていた時代がありました(これは男性に対しても同様です)。ですが、多様性(=ダイバーシティ)という言葉が日本に浸透したおかげで、「ぽっちゃり女子」という言葉もできた上にやや大きめの女性向けのブティック(例:ニッセンの“スマイルランド”)も生まれるようになりました。

www.nissen.co.jp

このような順行マーケティングが奏効するには、社会全体が対象となるコンプレックス(上記の場合ですと、肥満であること)をもはや当たり前となる風土・文化が醸成されている状況が存在していることが前提になると考えています。

 

最後に『4. 新価値提案マーケティング』です。これは逆行でも、公式美・公式機能でも、順行でもないものが相当します。一見すると「公式美・公式機能マーケティング」と混同してしまいがちですが、既述した通り、公式美・公式機能は既に社会通念上、「こういうのが良いよね」というものであるのに対し、新価値提案はこれまでに無かったものを提供するという点が特徴です。例えば、昨年あたりからジワジワと盛り上がりを見せつつあるのが、「男性向けメイクサービス」です(例:イケメン製作所)。

news.yahoo.co.jp

新価値提案マーケティングの多くは、周りの同性がしているのであれば、あるいは異性の声として「アリだよね」という声もあることを認識した上で、対象顧客が自分のライフスタイルに取り入れていくものが多いです。ですので、ユーザーにあえて新規の身体的付加価値として気づかせ、新たに「身体(カラダ)」にインストールさせていく機能のように捉えることも出来ると思います。

 

ということで、具体的にどのモノ・サービスがどのマーケティングアプローチに相当するのかについてザッとまとめてみたのが、下記のマトリクスです。

皆さまお馴染みのモノ・サービスを男女、そして両性別毎に思いつきレベルで整理しているので、ひょっとしたら、ご自分がどのマーケティング手法に乗せられているのかについてもっとイメージできるかもしれません。

 

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身体的コンプレックスのマーケティングアプローチ©松本圭司

 

以上、何かの参考になれば幸いです。

今年もこんな感じで思いつくがままに書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m